「緊急小口資金」と「総合支援資金」(新型コロナ対策その8)

第2次補正予算の成立により、9月末まで申請可能となった個人向け貸付制度「緊急小口資金」「総合支援資金」について、厚生労働省の担当者(社会・援護局 地域福祉課 生活困窮者支援室)から話をお聞きしました。

この制度は、コロナ禍によって収入が減少し、生活資金が必要となった個人に対して、20万円を上限に貸し付けられるものです。

個人向け貸付制度「緊急小口資金」「総合支援資金」

「緊急小口資金」(一時的資金が必要な方)

  • 貸付対象:休業等による収入の減少により、日常生活に困っている方(休業していなくても可)
  • 貸付金額:20万円以内
  • 据置期間:1年
  • 返済期間:2年(住民税非課税世帯は返済免除)
  • 貸付利子:無利子、保証人も不要

「総合支援資金」(生活の立て直しが必要な方)

  • 貸付対象:失業等による収入の減少により、日常生活に困っている方(失業していなくても可)
  • 貸付金額:月額20万円(2人以上世帯)、15万円(単身世帯)
  • 貸付期間:原則として3ヶ月間(必要に応じて3ヵ月以上も可)
  • 据置期間:1年
  • 返済期間:10年(住民税非課税世帯は返済免除)
  • 貸付利子:無利子、保証人も不要

本来は低所得者向けの貸付制度でしたが、今回特例措置として、コロナ禍による収入の減少があれば、必ずしも低所得である必要はなく、また収入の減少額も問いません。また、返済時においても低所得(住民税非課税)であれば、返済も不要で、最大で3ヵ月で80万円(延長も可)が給付されます。

申請窓口は市区町村の社会福祉協議会ですが、5月からは労働金庫や郵便局でも受付けています。

申請方法は、当初、社会福祉協議会の窓口に相談する方式だったため、予約に1ヵ月以上待たされるケースもあり、大きな批判を浴びました。このため、現在は申請書をダウンロードし郵送での受付を原則としており、近日中にインターネットでの申請も可能となります。

更に厚生労働省は数次にわたり通達を出し、申請の簡素化を図ってきました。その結果、申請書類は大幅に簡略化され、給与明細等の収入の減少を証明する書類は不要で、申立書(収入の減少額を自己申告する書類)のみで可能となっており、現在は申請から1週間程度で支給されています。

貸付は世帯に対して行われるものですが、世帯主がアルバイトや学生の場合でも支給されます。ただし、未成年者の場合は、親族の同意が必要となります。

また従来は「失業給付や年金等の公的給付を受けている者」は対象外でしたが、今回の特例措置として認めています(ただし、生活保護受給者は対象外)。

この貸付制度は、平時であれば年7千件で、リーマンショック時には年3万件でしたが、今回は2ヵ月強で30万件を超えています。

厚生労働省は、都道府県(社会福祉協議会)に対する事務連絡(問答集)の中でも、かなり柔軟な対応を求めており、

「貸付の要件において、収入の減少の程度は問わない。休業や失業状態になくても貸付の対象となり、申立書(自己申告書)を活用して、柔軟な対応を進めてほしい」

「返済能力の審査については、緊急小口資金は、過去の貸付で著しく不誠実であった者を除き、柔軟に貸付を行ってほしい。総合支援資金は、3ヵ月の貸付は柔軟に対応し、3ヵ月以上の貸付を行う場合は、収入状況等を確認し、返済能力を考慮して検討してほしい」

「ネットカフェに居住するなど住所のない方についても、住居を得る支援を行った上で、柔軟に運用を行ってほしい」

「特に急を要する場合には、必要書類は事後提出とし、申込日の翌々営業日までに送金が行われるように迅速化をお願いする」

等々のかなり柔軟な対応を求めています。

厚生労働省の担当者からは、

「今回は非常事態なので、平時とは全く異なる運用に変更していますが、必ずしも社会福祉協議会に伝わっていないケースもあるようです。何か問題があれば、我々にご相談ください」

と言われています。

この制度に関するご質問やご意見・ご要望、並びに下記の事務連絡(問答集)に沿った対応が行われていないケースなどがあれば、厚生労働省に相談しますので、私(takai@takaitakashi.com)までご連絡ください。

(※)厚生労働省からの事務連絡「特例貸付の運用に関する問答集」
生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.10)について(PDF)

「緊急小口資金」と「総合支援資金」(新型コロナ対策その8)資料

引用・参考・出典

【出典記事】
たたかい日記:新型コロナ対策その8(緊急小口資金・総合支援資金)