【ヨーロッパ視察報告(その2)】 ドイツの「シュタットベルケ」という地方自治体の事業モデル

【ヨーロッパ視察報告(その2)】

ドイツには「シュタットベルケ」という素晴らしい地方自治体の事業モデルがあります。

「シュタットベルケ」とは、直訳すると「町の事業」という意味ですが、電力、ガス、水道、熱供給、下水処理、ゴミ収集、廃棄物処理、交通、文化・スポーツ施設等の運営を行う公営企業体で、ドイツ国内に約1000社あります。自治体が100%又は大半の所有権を有していますが、日本の第3セクターと大きく異なるのは、民間企業との自由競争の中でサービスを提供している点です。

また、日本の第3セクターは、一つの事業ごとに縦割りでサービスを提供していますが、ドイツでは総合的にサービスを提供することにとって、経営基盤が強く、民間企業並みの収益性を挙げています。これにより、相互に赤字部門の補填が可能で、例えば恒常的に赤字となる地域公共交通の赤字をエネルギー事業で賄うことなどが可能になります。

地域住民にとっても、電気、ガス、水道、電話の請求書が一つで済むなどのメリットがある他、地域の雇用も生まれ、地元企業への発注も多くなるなど、地域循環型のモデルとなっています。

ライン・フンスリュック郡内でも、いくつかのシュタットベルケがあり、この日は2つの自治体が共同で経営している「地域熱供給センター」を視察しました。

このセンターでは、木質バイオマスの熱供給と太陽光の熱供給が併設されており、季節や時間帯によってメリットの大きい供給方法を選択しています。

2自治体の世帯数の約7割にあたる144世帯が加入しているそうですが、加入を増やすために首長自らが一軒一軒訪問し、説得して歩いたそうです。

更にこの世帯をネットワークで結び、300Mbpsの超高速インターネットサービスを提供する他、各家庭にスマートメーターを設置し、センターに蓄電池とスマートオペレーターとをつなぐ配電網を整備することにより、各家庭で太陽光発電の際に生じていた発電量の変動がかなり平準化され、太陽光発電がベースロード電源となっています。

この「シュタットベルケ」は、近年日本でも注目されており、福岡県みやま市などが先駆的な取組みを行っています。みやま市もライン・フンスリュック郡と連携を図っており、ドイツの素晴らしい取組みを日本にも取り入れてゆけるように、帰国後は汗をかきたいと思います。