安倍政権の総括と決意
歴代最長7年8ヵ月間におよぶ安倍政権の幕が閉じた。
国のトップ、総理大臣という職責は想像を絶する気力・体力を消耗する激務だと思う。その激務を7年8ヵ月もの間、明治以来135年間誰もやったことがない長い間務められたことには心から敬意を表したい。
「政権投げだし」との批判もあるが、私はそうは思わない。持病が悪化する中で、最悪の事態を避けるため、このタイミングでの辞任は潔い決断だったと思う。
長期政権がゆえに功罪はたくさんある。
最大の功績は、毎年代わっていた総理大臣が長期間務めたことだ。これは外交上のパワーになったし、行政の継続性にも寄与したと思う(小泉内閣のように1内閣1閣僚であればもっとよかった)。
しかし、一方で長すぎたことが、権力の集中を生み、官僚の忖度につながったことも否めない。「権力は腐敗する」ものであり、もともとの自民党党則の「総裁は2期6年まで」というのがちょうどいいと思う。
安倍政権の看板政策である「アベノミクス」も、確かに株価は上がり、失業率は下がる(ただし、これは生産年齢人口減少の影響が大きい)など、一定の成果はあったものの、その恩恵は地方や庶民にはいきわたっていない。禁断の果実ともいえる「異次元の金融緩和」まで行いながら、デフレ脱却は実現せず、GDPも横ばいだ。経済政策が成功したとは到底言い難い。
外交も、長期政権により日本のプレゼンスは上がった一方、60兆円超の海外へのバラマキや兵器爆買いに象徴される対米追随外交は、国益を損ねたとの批判もある。また最も力を入れてきたはずの拉致問題や北方領土問題もほとんど進展は無かった。
私が何よりも罪が深いと思うのは「憲法軽視」「国会軽視」だ。歴代自民党政権が矜持をもって守り続けてきた憲法9条の解釈を閣議決定で変更してしまうという暴挙。しかも、内閣法制局長官の人事という禁断の手まで使って。さらに、内閣人事局制度を悪用する形での恣意的・強権的な官僚人事が官僚の忖度を生み、ついには公文書改ざんという犯罪にまで手を染めさせてしまった。憲法53条に基づく臨時国会召集要求も無視し続け、国会においては、ご飯論法に象徴される、ごまかしやすれちがい、詭弁の答弁の数々。慣例を破っての短時間での国会審議と強行採決の数々によって国会は形骸化した。「国会の軽視」は「国民の軽視」に他ならず、「民主主義の否定」である。
メディアへの対応も酷かった。NHKに対しては会長人事、民放各社に対しては電波停止(免許取消し)をちらつかせ、報道をコントロールしてきた。記者会見では自分に都合の良い質問にしか答えない。その結果、世界報道自由度ランキングは11位から72位まで下がってしまった。
新型コロナウイルス感染者対策も後手後手に回った。世界23カ国で行われた世論調査では、日本政府のコロナ対策を高く評価した人の割合は5%で、世界平均の40%から大きく離れた。
ただ、最後に申し上げたいのは、安倍政権の数々の罪を許してしまった責任は我々野党にあるということだ。問題が起こる度に、内閣支持率は下がっていたのに、その後行われる選挙で自民党は圧勝し、国民の不満の声はかき消されてしまった。「安倍政権は酷いけど、野党にはとても任せられない」というのが一貫した国民の声だった。
立憲民主党と国民民主党が合流し「大きな塊」になれば…と安易に考えている同僚議員がいるようだが、そんなに甘いはずがない。せっかく両党は「解党」したのに、これが単なる「民主党の復活」に終わったら、有権者はますます失望してしまう。私自身、野党の一員として、そのことを常に肝に銘じながら、これからの政治活動を続けていきたい。