民主党の「論憲」こそ、政権交代の勝因
シン国民民主党の第2回憲法調査会に参加しました。
講師は東洋大学名誉教授の加藤秀次郎氏。2005年に民主党議員有志とともに「新憲法草案」を作成した方です。
私が興味を持ったのは、「新憲法草案」の話よりも、「憲法をめぐる世論の推移」についての話でした。
加藤先生の憲法をめぐる世論の推移
加藤先生によれば、憲法改正については、
- 第1期(1950年代)改正派が多数
- 第2期(1960年~1990年代初頭)改正論がタブー視される
- 第3期(1993年頃~2007年頃)改正論が多数派に(2005年には民主党支持者の方が自民党支持者より憲法改正に積極的)
- 第4期(2007年頃~)慎重論増える
と波があります。
なるほど…と思い、私も民主党の過去の憲法改正に対するスタンスを調べてみました。
民主党の過去の憲法改正に対するスタンス
2001年2月 江田五月元参議院議長 民主党憲法調査会の事務局長としての発言
2001年2月、私の政治の師である江田五月元参議院議長は、民主党憲法調査会(会長:鹿野道彦)の事務局長として、以下の発言をしています。
- 我が党の憲法問題に対する姿勢を一言で表現すれば、「論憲」つまり積極的に憲法を論じてみようということです。
- 21世紀におけるこの国のかたちを、ここで、しっかり議論しなければならない。となれば、国のかたちの基本を成すのが憲法ですから、当然、それについて議論してみようということになるわけです。
- 憲法改正の話をすると、戦前、戦中の神国日本という流れに戻っていく。せっかくの戦後の民主主義の歩みを無にしてしまうから、憲法の議論などしてはいけないという人たちがいます。その方々からすれば、今、私たち民主党が論憲と言っていることも、危険な兆候としてとらえるかもしれない。しかし私はそうは思っていません。今、戦前のような考えが国民に浸透する条件は無いと思います。そこに神経を尖らすあまり、貝のように閉じこもるのではなく、むしろ大いに議論すべきです。
- 21世紀のこの国のかたちはかくあるべしと定まり、そのためには憲法の条文にどうしても筆を入れる必要があるということなら、躊躇せずそうする。これが民主党の姿勢であり、私自身の意見でもあります。
2005年10月 民主党憲法調査会の「憲法提言」
2005年10月、民主党憲法調査会(会長:枝野幸男、事務局長:古川元久)の「憲法提言」では、以下のとおり記されています。
- 我が国の憲法の姿は、その時々の政権の恣意的解釈によって、憲法の運用が左右されて、いまや憲法の「空洞化」が叫ばれるほどになっている。いま最も必要なことは、この傾向に歯止めをかけて、憲法を鍛え直し、「法の支配」を取り戻すことである。
- 日本ではこれまで、憲法制定や改正において、日本国民の意思がそのまま反映される国民投票を一度も経験したことがない。私たちは、憲法を国民の手に取り戻すために、国民による直接的な意思の表明と選択が何よりも大事であることを強く受け止めている。
- そもそも、憲法の姿を決定する権限を最終的に有しているのは、政党でも議会でもなく、国民である。今後はさらに、憲法を制定する当事者である国民の議論を大いに喚起していくことが重要である。民主党はその先頭に立って、国民との憲法対話を精力的に推し進めていく決意である。
- 多角的かつ自由闊達な憲法論議を通じて、①「自衛権」に関する曖昧かつご都合主義的な憲法解釈を認めず、国際法の枠組みに対応したより厳格な「制約された自衛権」を明確にし、②国際貢献のための枠組みをより確かなものとし、時の政府の恣意的な解釈による憲法運用に歯止めをかけて、わが国における憲法の定着に取り組んでいく。
2013年10月 民主党憲法総合調査会の枝野幸男会長「文芸春秋」へ寄稿
2013年10月、民主党憲法総合調査会の枝野幸男会長は、「文芸春秋」へ寄稿し、自衛権行使の要件を明文化した条項を9条に追加し、憲法解釈の幅を極力狭めることで、無原則な軍拡に歯止めをかける必要性を打ち出し、「時の内閣の判断で憲法解釈を変更できる可能性がある」ことが現行憲法の最大の問題と指摘しています。
民主党・民進党・立憲民主党は、「安倍首相の下で憲法改正の議論はしない」という方向に方針転換
ところが、2014年7月安倍内閣によって集団的自衛権の解釈変更が閣議決定され、2015年9月安全保障法制が成立するに至り、民主党・民進党・立憲民主党は、「安倍首相の下で憲法改正の議論はしない」という方向に方針転換します。
確かに、安倍首相による議論に値しない改憲案(自民党内ですら十分議論されていないの)を議論したくないのはわかります。
しかし、安倍首相も退陣した今、「憲法については議論しない」という姿勢を、多くの国民は支持してくれるでしょうか?
2009年、民主党が政権交代を実現できたのは、民主党の「論憲」(憲法を積極的に論じる)という姿勢も、その一因ではないでしょうか?
最後に
政局(選挙)を優先し、国会議員として最も大切な役割の一つである「憲法論議」から逃げていては、多くの国民の支持は得られません。
今こそ、2005年民主党「憲法提言」を読み返してみるべきです。
「憲法を制定する当事者である国民の議論を大いに喚起していくことが重要である。民主党はその先頭に立って、国民との憲法対話を精力的に推し進めていく決意である。」