【マレーシア視察報告(その7)マレーシア経済研究所カマル所長】

【マレーシア視察報告(その7)マレーシア経済研究所カマル所長】

GST(消費税)の導入は、1980年に当研究所で議論が始まった。政府の方針は「直接税から間接税に移行」であり、法人税は30%が24%まで下がったが、GST導入は国会で否定され続けてきた。

経済学者の間ではGSTは好ましい税制である。課税ベースを拡げ、広く薄く課税する。ただGSTは逆進性があり、貧困層に厳しい。富裕層の海外資産隠し対策が重要で、最近ようやく対策法案が成立した。

前政権、現政権ともに企業に対して好意的だ。国連はマレーシアの貧困対策を評価してきたが、最近の報告書では「マレーシアの貧困ラインが低すぎる」との指摘があった。B40(所得の下位40%層)の95%が賃金から収入を得ている。

直接税(所得税・法人税)の累進性を引き上げるべき。新政権は企業よりを変えなければならない。直接税引き上げのタイミングが重要。

国営石油公社ペトロナスは毎年600~800億リンギ(1.5~2兆円)を配当しており、政府予算2400億(6兆円)の4分の1を賄っている。

政府の財政赤字は続いており、累積でGDPの55%まで来ているが、おそらく経済危機が発生しても大丈夫な水準だ。単年度の財政赤字は、GDP比7%から5.5%に下がり、現在は3.4%まで下がっている。将来的には財政赤字の拡大も検討しなければならないだろう。

政府債務の対GDP比55%の上限は歴史的経緯により法律で決まっている。現在GDPの6%が債務の償還に使われているが、この数値は低く、対外債務も少ない。世界銀行とIMFからもよい評価を得ている。マレーシアの課題は財政問題よりも構造問題。生産性向上、賃金アップ、第4次産業革命の遂行が重要。