【マレーシア視察報告(その8)商工会議所クン委員長】
【マレーシア視察報告(その8)商工会議所クン委員長】
2013年4月財務省の「GST(消費税)導入のためのタスクフォース」のメンバーを務め、2018年5月には「GST廃止のためのタスクフォース」のメンバーも務めた。
SST(売上・サービス税)では納税者が納税額を把握できなかった。これに対してGSTは税の明細が表示される。納税意識が高まり、現在はSSTに戻っても税金をいくら払っているかを気にするようになった。
今年度のSSTの税収は220億リンギ(5600億円)にすぎない。政府はGSTとの差額分220億リンギ(5600億円)を国民に還元したと主張しているが、日用品の価格が下がっていないため、国民は評価していない。
マレーシア企業の98.5%が中小企業であり、約100万社ある。GSTは多段階課税方式のため、会計システムのIT化が不可欠で、多額のIT投資が必要となった。多くの中小企業は5000~7000リンギ(13~18万円)のIT投資を行った。
多額のIT投資が3年後に必要なくなったという不満がある。GSTのみに対応した会計システムのため、SST対応のソフト改修を余儀なくされ、更なる投資を求められている。
先週行われた財務省の2020年度予算案に関する会合では、多くの経営者がGSTの方が良かったと不満を述べていた。GSTの方が透明性があり、価格上昇を避けることができ、税の還付手続きがあることが主な理由。
財務省では、SSTを再びGST相当の制度に戻すことを検討中で、本年11月に新たなタスクフォース(「調和タスク」と命名。SSTという名称は変えず、GSTに近似する制度の創設をめざす。)が設立される予定。我々はカナダの経験から学ぼうとしている。
「調和タスク」が実現すれば、SSTとGSTとの税収のギャップは少なくなると見込まれる。
政府はGST廃止に伴う税収の減少は、汚職の撲滅と政府の透明化・効率化によって賄えると考えているようだ。