「積極財政」に関する財務省との議論(13回の国会質疑録)
2021年4月14日から8月4日まで計13回にわたり厚生労働委員会において、財務省の副大臣・政務官・主計局次長等と「積極財政(反緊縮)」をテーマに議論を交わしました。
過去の国会質疑で、このテーマをこれだけ集中的に取り上げた例はなく、これまで明らかにされてこなかった財務省の考え方や本音が答弁に垣間見ることができます。
計13回の質疑をダイジェストにしてありますので、ぜひご一読ください。
(詳しくお知りになりたい方は「高井たかし国会質疑動画(https://takaitakashi.com/archives/category/video)」をご覧ください。
MMT・反緊縮政策を財務官僚に問う
4月14日、16日の厚生労働委員会において、財務省の宇波主計局次長と「MMT・反緊縮政策」について以下の通り議論しました。
自国通貨建て国債はデフォルトしない
(高井)「『変動為替相場制を取る国における自国通貨建て国債は債務不履行(デフォルト)しない』というのはMMT・主流派経済学者も一致した見解だと思うが、財務省も同じ考えでよいか」
(宇波次長)「財政状況が厳しい中で日本国債が円滑に市場で購入されるのは、日本の財政運営に対する信認が前提となっている。その観点から自国通貨建て国債であっても、その債務の持続可能性に対する市場の信認を失う事態が発生すれば、金利の上昇などを通じて、市場から資金調達が困難になる可能性は否定できない」
インフレ率2%まで国債を発行すべき
(高井)「債務の持続可能性に対する市場の信認があるかどうかのメルクマールがインフレ率だ。インフレ率2%になるまで国債を発行し続けても何も問題がないと考えるがどうか」
(宇波次長)「日本の財政赤字の拡大は、少子高齢化を背景に社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的要因だ。インフレになるまで財政赤字を容認すれば、インフレ局面において社会保障の減額あるいは増税を行わざるを得なくなり、国民生活に大きな悪影響を与えかねない」
(高井)「『インフレ率2%になったら国債発行はやめる』というトリガー条項を法律で定めてはどうか」
(宇波次長)「この30年間社会保障以外の予算は横ばいだが、社会保障予算は3倍に増えている。財政健全化と持続可能な社会保障制度を構築することは表裏一体だ。インフレ局面で国債発行を停止することは社会保障の急激な削減あるいは増税を行わざるを得なくなり国民生活に悪影響を与えかねない。またそのことを法律上宣言することは社会保障に対する国民の将来不安を助長しかねない」
財務省は「財政健全化」よりも「国民生活向上」をめざすべき
(高井)「国民はインフレが2%に近づけば増税もあると覚悟するようになるから問題ない。むしろそれまでの間は国債発行による財政出動で経済は上向く。日本は20年以上デフレでありまだ大丈夫。債務がGDPの2倍だから問題だとか世界で最も債務が多いなどは市場の信認とは関係ない。客観的基準はインフレ率だ。財務省設置法には財務省の任務は『健全な財政の確保』と書いてある。財務省が目指しているのは日本経済の発展や国民生活の向上ではなく財政健全化なのか。そもそも国債を国の借金という言い方がおかしい。国債は『政府の債務』であると同時に『国民の資産』だ。個人や民間企業の債務とは根本的に違う。今後は国債残高を『政府の債務(国民の資産)』と表記すべきではないか」
(宇波次長)「国債は保有する国民にとってその限りでは確かに資産だ。しかし国債の返済や利払いにおいては、追加的に税金等の負担あるいは歳出改革の協力をお願いしなければならず『国の借金』と表記している。」
時間の制約もありなかなか議論がかみ合いませんが、引き続きこのテーマを取り上げ、財務省が「反緊縮政策」に方針転換するように粘り強く説得したいと思います。
MMT・反緊縮政策を財務官僚に問う(その2)
4月9日、14日の厚生労働委員会に続いて16日の同委員会でも、財務省の宇波主計局次長と「MMT・反緊縮政策」について議論を交わしました。認識の違いが大きすぎますが、粘り強く議論を積み重ねることで財務省を説得し「MMT・反緊縮政策」が実現するまであきらめず闘い続けます。
財政に対する信認の基準は?
(高井)「宇波次長は令和元年10月23日の内閣委員会で『現在の日本でハイパーインフレが直ちに発生するとは考えにくいが、少子高齢化など経済社会構造の変化の中でこうした状況がずっと続くとは限らないので、財政に対する信認が損なわれないよう、債務残高対GDP比の安定的引き下げをめざし財政健全化を図っていくことが重要』と答弁しているが、『財政に対する信認』を判断する客観的基準は何か?」
(宇波次長)「一概に評価するのは難しいが、国債の償還可能性や債務の持続可能性などの点で財政の信認が確保されることが重要。例えば、IMFワーキングペーパーでは市場の信認の喪失の具体的状況として、市場から持続的に資金調達ができなくなった場合、ソブリンスプレッドの大幅な上昇など、市場へのアクセス費用が増加した場合などを例示している」
(高井)「通貨発行権もある日本が、デフレ下で自国通貨建て国債を発行して、財政に対する信認が損なわれることがあるのか?」
(宇波次長)「財政運営に対する信認が確保されているかということを背景に現在の国債が安定的に消化されていると考えている」
積み木はどこまで積めるのか?
(高井)「主計局長が『積み木を積み上げて今が大丈夫であっても更に積み上げても大丈夫とは誰も言えない』と発言されたと聞くが、どういう意味か?」
(宇波次長)「公式な場の発言ではなく詳細は承知していないが、察するに累増する債務残高を積み木に例えたと思う。財政の健全性を評価するにあたって、債務残高対GDP比が重要な指標であることはIMFやOECDも言及しており、同比の安定的な引き下げを目指すことが重要」
(高井)「財務省は積み木が2個3個積み上げて全く倒れそうにない状況なのに倒れそうと言っているようなもの。倒れるかどうかの判断基準はインフレ率だ。今の日本はデフレに20年以上苦しんでいて、インフレ率2%の目標も達成されていない状況でまだ積み木は積める(国債は発行できる)のではないか?」
(宇波次長)「我が国の債務残高対GDP比は先進諸国の中で群を抜いて高い水準だ。インフレ率が高くなったときに国債の発行を停止すればいいという指摘はインフレ局面で社会保障の大幅な削減か増税を行わざるを得なくなり国民生活に悪影響を与えかねない」
財務省設置法に問題あり
(高井)「債務残高対GOP比率が世界一高いのに全くインフレにならないのは日本に余力があるからだ。財務省設置法の任務の最初に『健全な財政の確保』とあるが、財務省の最大の任務は『予算編成』だ。この20年間でIT企業は世界トップ10の全てを占めるに至り、米英はIT予算を2倍も3倍も増やしているのに日本は20年間全く増やしていない。インフレ率は高くない(積み木は倒れない)のに財政再建ばかり叫んでいる財務省が問題だ。設置法の任務を変えるべきではないか?」
(宇波次長)「予算編成は主計局の所掌事務の中で記載されている。また別の法律で財務省の使命として『広く国の信用を守り、健全で活力のある経済及び安心で豊かな社会を実現すること』と記載している。IT予算の件も、財政赤字による財政硬直化の弊害で、限られた予算の中で他事業への適切な配分が難しくなる」
(高井)「発想が違う。財政再建を目的とするから緊縮財政となり、重要な分野に予算が回らない。IT分野などにどんどん予算をつけて経済成長させれば税収で返ってくる。日本はまだ財政再建しなくても大丈夫だ。設置法の任務にきちんと明記すべきだ。」
MMT・反緊縮政策を財務官僚に問う(その3)
4月21日の厚生労働委員会で、9日、14日、16日に続いて、将来の事務次官と呼び声の高い財務省の宇波(うなみ)主計局次長と「MMT・反緊縮政策」について4度目の議論を交わしました。
相変わらず「すれ違い(かみ合わない)答弁」が続きます。
あらかじめ質問通告をすると優秀な財務官僚たちが巧妙な「すれ違い答弁(ご飯論法)」を用意するので、次回は質問通告なしで、本気の議論を宇波次長と行いたいと思います。
「財政に対する信認」とは?
(高井)前回私からの「どのくらい国債を発行できるかの基準は何か?」との問いに財務省は「財政に対する信認」「債務の持続可能性」と答えている。私は「財政に対する信認」が損なわれる状況とはインフレが進行する状況だと考える。20年以上デフレが続き、通貨発行権があり、自国通貨建てで国債を発行する日本で「財政の信認」が損なわれることがあるのか?
(宇波次長)3点申し上げたい。1点目は自国通貨建て国債であっても市場の信認を失えば金利が上昇して資金調達が困難になる。2点目は通貨発行権がある中央銀行が紙幣を刷って国債を無限定に引き受けて財源調達を行えば、急激なインフレによって深刻な影響が生じる。3点目は社会保障の受益と負担がアンバランスな状態にあることが財政赤字の主たる要因で、これを放置し続けると社会保障制度や財政の持続可能性に対する信認が損なわれる。したがって財務省は経済の再生と財政健全化の両立を進めてまいりたい。
インフレ率以外に基準はあるのか?
(高井)財務省が心配するような事態になればインフレになるはずだ。しかし日本はデフレだ。政府はインフレ率2%を目標に必死にやってもデフレだ。誰も積み木がいつ倒れるか(財政がいつ破綻するか)わからないけれども、その判断基準はインフレ率しかない。他に基準はあるのか?
(宇波次長)一つの特定の指標ではない。例えばわが国の財務残高対GDP比は先進国の中でも際立って高い水準にある。特定の水準について政府として何か申し上げたことはない。
MMTに対する財務省の見解は?
(高井)MMTだけでなく主流派経済学者だってインフレ率が客観的基準だと認めている。ところが財務省は2年前の財政審にMMTに対する批判的コメントばかりを載せた資料を配布しており意図的だ。財務省のMMTに対する見解は?
(宇波次長)MMTの理論はインフレにならない限り財政赤字を拡大しても問題ないという考え方と承知している。こうした考えに基づき政策を行った場合、過度なインフレあるいは悪い金利上昇が起こり、予測困難で、一旦起きれば制御不可能になる。物価上昇局面において、急に社会保障の減額や増税を行うと国民生活に悪影響を与えかねない。
IMFラカルド専務理事の発言
(高井)財政審に配布した資料の中にIMFラカルド専務理事のMMTに批判的なコメントがあるが、そのコメントの直後の「デフレに見舞われた状況下では、短期的には効果的かもしれない」との発言はカットしているが、意図的にカットしたのか。またこの発言に対する財務省の見解は?
(宇波次長)ラガルド氏は記者会見で質疑の冒頭「MMTが持続可能な方法で実際によい価値を提供できる状況にある国が現在あるとは考えていない」と述べており全体的にMMTに批判的なコメントを述べている。ご指摘の発言の後にも「短期的にそれをやったとしてもその後金利が上昇すれば財政運営が罠に陥る」との発言もあった。
(高井)MMTに批判的な経済学者の多くは「MMTの理論は理解するがインフレをコントロールできるのか?政治家に任せられるのか?」という点を問題視している。だから「インフレ率2%になれば国債発行は増額しない、抑制する」という法律を作ればいいと提案している。債務残高対GDP比が世界一高くなってもデフレが続くということはそれだけ日本に潜在力がある証拠だ。債務残高対GDP比が問題だというならGDPを増やすことを一生懸命やるべき。
(宇波次長)分母であるGDPを増やすことは重要。他方、成長への取組みを行っても社会保障の給付と負担のアンバランスは増大していくため、成長だけでなく社会保障給付の伸びの抑制などの歳出改革、国民負担の見直しなどの歳入改革をしっかり行うことが重要であり、経済再生と財政健全化の両立を図っていくのが政府の方針。
(高井)そういう答弁だとやはり財務省設置法を変えるべきという気持ちになる。引き続き議論したい。
MMT・反緊縮政策を財務官僚に問う(その4)
4月23日の厚生労働委員会で、9日、14日、16日、21日に続いて、財務省主計局の宇波(うなみ)次長と5度目の質疑を行いました。
これまでの4回はいずれも詳細に質問通告を行ってきましたが、優秀な財務官僚が用意周到な「すれ違い答弁」を用意し議論がかみ合わないので、今回は詳細な質問通告はせず、財務省の本音を引き出すことを心がけました。
いくつか本音を聞き出すことができましたが、まだまだ不十分であり、引き続き議論を続けてまいります。
以下が議事録の要約版です。詳しく(正確に)知りたい方は動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=f8rdc4C8U_k
財務省のMMTに対する評価
(高井)主計局次長といえば財務省のエースで事務次官コース。とりわけ宇波次長は菅首相の信頼も厚いと聞く。今日は質問通告していないことを聞くが本音を語ってほしい。2019年4月17日の財政制度等審議会に財務省が提出した4枚の資料はMMTに対する批判的コメントばかりだ。MMT賛成派の経済学者もたくさんおり、そのコメントを載せないのは不公平だ。なぜ財務省はMMTに対してこんなに冷たいのか。「全く無視で研究すらしていない」のか、それとも「研究した結果財務省にとって都合が悪いため敢えて議論しない」のか、どちらか。
(宇波次長)大変恐縮ながら政府委員として答弁するので、個人的見解は申し上げません。ご指摘の資料は経済学者や外国政府の責任者等の発言の中でMMTに対する評価の要点を抜粋してまとめたもの。MMTの最も問題だと考えているのは、現在の財政赤字の主たる要因である社会保障の給付と負担のアンバランス、これを物価上昇局面において急速に解決することは社会保障の急激な削減や増税を行わざるを得ないため、国民生活に非常に大きな悪影響を与えかねない点。
(高井)私が聞いているのは、財務省がMMTをどの程度研究しているのかという点。この4枚の資料はひどい。MMTを推奨しているコメントは1つも載っていない。MMTをどの程度研究した上でこの資料を作ったのか。
(宇波次長)MMTの様々な主張については、もちろん財務省の中でいろいろな文献を読んだりして検討しているが、先ほどの理由からMMTに基づく政策を採る考えはない。
インフレ率2%まで国債発行額を増やすべき
(高井)おそらく初めて「財務省内でMMTを研究している」という答弁があったと思う。頭のいい財務官僚がMMTの理論を理解できないはずがないので、やはり財務省にとって都合が悪いから議論すらしないのだと理解した。私の提案は「インフレ率2%になるまでは国債発行額を今よりも増やそう」というもので、インフレ率2%になった後に社会保障削減や増税は必要ない。れいわ新選組の山本太郎代表は参議院調査室の試算をもとに「毎月10万円の現金給付」を行ってもインフレにならないと提言。国民民主党の玉木代表は「こども国債」発行を提案している。私ならIT関連予算を2~3倍に増やす。インフレ率2%まで国債発行額を増やし、こうした政策を実行できない理由は何か。
(宇波次長)現在が均衡財政であれば理解できるが、既に財源の4割を公債金で賄っており、債務残高対GDP比は先進国最悪。社会保障の給付と負担のアンバランスを将来にわたって持続可能なものとする改革が必要。
(高井)債務残高対GDP比が3倍だと何が問題なのか。政府の負債は国民の資産であり「借金」ではない。ただ無限に国債を発行するとは言っていない。債務破綻するか否かの基準がインフレ率だ。インフレ率が一つの大きなメルクマールであることは認めてほしい。
(宇波次長)財政に対する信認を何か特定の客観的基準で評価するのは困難。例えば社会保障の持続可能性も一つの重要な要素。他にも債務の持続可能性、国債の償還可能性や国債の実質的価値が安定していることが重要。市場参加者は財政状況や経済力などの様々な指標で総合的に判断する。更にソブリンリスクプレミアムや金利も一つの指標。インフレ率は財政政策との関係で議論するのは難しい。国債を無限定で発行すれば、悪いインフレがいつ起こるか予測不能で制御も難しい。
財務省がMMTを否定する3つの理由とその反論
(高井)社会保障の受益と負担がアンバランスだと市場参加者は国債を買わなくなるのか。現に日本の国債は買われているし、暴落もしない。そのわかりやすい客観的な指標はインフレ率だ。この点はMMTを否定する主流派経済学者だって認めている。ただ「インフレはコントロールできないからMMTは採用できない」という経済学者は多い。だからあらかじめ法律で「国債発行増額はインフレ率2%まで」と制限しようと提案している。前回宇波次長は財務省がMMTを採用しない理由を3つあげた。1つ目は「自国通貨建て国債でも市場の信認を失えば金利が上昇し資金調達が困難になる」と。だから金利が上昇するまで、インフレになるまでと条件を付けている。2つ目は「通貨発行権のある中央銀行が紙幣を刷って国債を無限定に引き受けるわけにはいかない」と。私は無限定に引き受けろとは言ってない。インフレ率2%までと限定している。3つ目は「社会保障の受益と負担のアンバランスがある」と。これはこの問題を解決する法律を作ればいいだけの話。3つの理由はいずれも否定されたと思うがどうか。
(宇波次長)財政は社会保障のアンバランスと裏腹な関係であり、長期間にわたって持続可能なものにする必要がある。高井委員は「インフレになるまで」と言うが、政府としては、現在長いデフレの中で安定的に国債が消化されているが、インフレになったら全部違うという前提で財政や社会保障政策の運営を行う考えはない。
(高井)だから法律であらかじめ「インフレ率2%まで」と定めようと提案している。山本太郎さん提案の「国債発行で毎月10万円給付」のような政策は「インフレ率2%まで」と法律で定め、「2%になったら元に戻しましょう」と提案している。以上の提案を財務省は研究会等を設けて様々な立場の経済学者を入れて徹底的に議論してほしい。
(宇波次長)「今の財政状況に戻す」と言われるが、今既にアンバランスであり、現在に戻すことが望ましいとは考えていない。財政に関する議論や研究は財政制度等審議会で様々な有識者から議論してもらっている。
「消費税ゼロ」「国債発行による財政出動」を財務大臣政務官に問う
5月12日の厚生労働委員会において、4月9日、14日、16日、21日、23日に続き、財務省の舟橋政務官、宇波主計局次長と6度目の質疑を行いました。
以下は議事録の要約版です。詳しく(正確に)知りたい方は以下の動画をご覧ください。
https://takaitakashi.com/archives/41305
https://takaitakashi.com/archives/41308
消費税を減税し、法人税・富裕層課税を増税すべき
(高井)財務省はおもしろい役所だ。これまで何百回と委員会で質疑をしてきたが「政務3役(政治家)に答弁させてくれ」という役所は財務省だけだ。私は米国バイデン政権を参考にすべきと思う。4月28日発表の「格差是正計画」では、10年間に1.8兆ドル(200兆円)を投じて低所得者や中間層の底上げを図る。その財源は所得税の最高税率引き上げや金融資産課税、法人税増税、富裕層・大企業の課税逃れ対策の徹底により10年間で7000億ドル(80兆円)の税収増をめざす。日本もやるべき。この財源で国民一律10万円給付や消費税ゼロをやる。この間消費税増税分はそっくり法人税減税に充てられており、これを機会に決断すべき。
(舟橋政務官)消費税は、急速な高齢化等を背景に社会保障給付費が大きく増加しており、社会保障費をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から社会保障の財源として位置付けられており、消費税率の引上げは全世代型社会保障制度へと大きく転換していくためにどうしても必要なものであり、今引下げることは考えていない。税制の在り方全般については、所得税、法人税、消費税等を適切に組合せしながら必要な税収を確保することが基本であり、経済社会情勢の変化や国際的な動向等も踏まえつつ検討していく必要がある。
債務残高対GDP比改善のため国債を発行しGDPを増やすべき
(高井)国際的動向を見ても法人税増税や富裕層課税の傾向にある。国際的動向や現下の状況を踏まえればぜひやるべきだ。一方で財源は増税せずとも国債発行でまだまだ賄えると考えている。財務省はいつも「債務残高対GDP比」を改善したいと言うが、改善したいのであれば、債務残高を減らすよりもGDPを増やすことを本気でやるべき。30年間GDPが増えていないのは日本だけ。GDPを増やすためには国債を発行し、財政出動を増やして、中間層の底上げ、格差是正を行うべきだ。
(宇波次長)「債務残高対GDP比」の引下げに向けてGDPを増やすことは重要と考えている。ただ、高齢化に伴い一人当たりの医療費、介護費が大幅に上昇しており、成長への取組みを行ってもなお社会保障の給付と負担のアンバランス拡大が見込まれる。プライマリーバランスの赤字が継続・拡大している状況では、ストックの債務残高が増加していく。したがって、民需主導の経済成長を実現し、併せて社会保障の持続可能性を高める改革など歳出歳入改革の取組みを継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要である。
(高井)その二つは両立しないからGDPが増えないのだ。30年間なぜGDPが増えないのか、次回もう一度聞くのでしっかり答えてもらいたい。
財務省の任務は「財政健全化」ではない-財務副大臣と激論
5月21日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と7度目の質疑。財務省からはついに伊藤副大臣が登場しました。
私から副大臣を指名したわけではないのですが、財務省から「重要な答弁なので副大臣から答弁させてください」と申し出がありました。通常は「政府参考人(官僚)から答弁させてください」というのがほとんどで、「政治家から答弁させてください」という申し出は国会議員になって数百回質問してますが初めてです。
以下は議事録の要約版です。詳しく(正確に)知りたい方は以下の動画をご覧ください。
https://takaitakashi.com/archives/41411
https://takaitakashi.com/archives/41414
https://takaitakashi.com/archives/41417
財務省の最大の任務は?
(高井)副大臣は財務省の一番の任務は何だと思いますか。
(伊藤副大臣)適切な経済財政運営に資する取組みだと思います。
(高井)主計局次長は何だと思いますか。
(宇波次長)副大臣の答弁に尽きますが、例えば財務省の政策評価実施計画において「広く国の信用を守り、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現する」と財務省の使命が記載されているので、これに則って一生懸命働きたい。
(高井)財務省が本当にそう思っているのか疑問だ。財務省設置法には任務の最初に「財政健全化」と書いてある。私が考える財務省の最大の任務は「予算編成」だ。これに勝る仕事はない。財務省が予算編成を行っているからこそ他省庁は財務省に頭を下げる。財務省が「官庁の中の官庁」と言われる所以だ。予算編成で何をするかといえば「日本経済、国民生活を良くしていく」こと。しかし財務省はそれよりも財政健全化、プライマリーバランスの黒字化をめざし、必要な予算を切り刻んでいる。
日本のGDPが20年間全く増えていない理由
(高井)日本のGDPは20年間全く増えていない。世界を見れば平均で2.5倍増えている。中国は十数倍、米国は2.5倍、英国は2倍、独国は1.3倍。全く増えていないのは日本だけ。その原因は何か。
(伊藤副大臣)予算を最終的に決めるのは国会であることは肝に銘じている。日本経済の低迷が長引いた原因はバブル崩壊以降デフレが顕在化する中で企業が投資を控え、将来不安から消費が低迷したことに加えて、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、生産性の伸びの鈍化といった要因が影響している。政府としては、金融政策・財政政策・成長戦略を一体で進め、2019年には名目・実質とも過去最高水準となり経済の好循環は進んできた。引き続き経済社会や産業構造を見直し、民需主導の経済成長を実現することが必要と考えている。
(高井)予算は国会が最後に決めるのは当たり前だが、実際に国会で修正された例はない。米国では予算委員会で半分くらい予算が変わるが日本はそういう仕組みになっていない。副大臣の答弁で当たっているなと思うのは「消費が落ち込んでいる」という点。これが最大の原因。その消費をどう引き上げるかといえば、まずは財政出動。そして消費税減税。しかし逆に消費税を増税し、その度にGDPは落ち込んでいる。消費する中間層・低所得層に給付をしっかり行えば、貯蓄に回らず消費につながる。そしてIT等の成長分野の予算を増やす。IT分野は20年間予算が全く増えていない。この点をどう考えるか。
(伊藤副大臣)まずはデジタル化やグリーン社会の実現を始め、社会経済や産業構造を見直し、民需主導の経済成長を実現していくことが重要。その上で、財政出動はこれまでも経済状況を見極めた上で機動的に行ってきた。一方、債務の持続可能性や財政運営に対する信認が失われれば、悪い金利上昇や過度なインフレを含め国民生活に重大な影響が及ぶことが懸念されるため、民需主導の経済成長の実現とともに歳出歳入改革の取組みを継続し、経済再生と財政健全化の両立を図っていくことが重要と考えている。消費税については2019年の引上げは全世代型社会保障制度への転換のためにどうしても必要なので現時点において減税は検討していない。中間層、低所得層への支援は雇用、収入、住まいの確保など様々な課題に対応したきめ細かな施策を引き続き講じたい。その上で生産性を高める中で最低賃金の引上げを通じた賃金上昇を促すことが重要。IT等成長分野への予算の重点配分は予算編成において必要と考えている。こうした中、令和3年度予算はグリーン化、デジタル化など経済成長に資する中長期的な課題に着実に対応する予算となっている。
MMTに否定的な経済学者が意見を変えている現実
(高井)反論したいことがいっぱいあるが時間がないので最後に2問まとめて聞く。資料①は2019年4月17日の財政制度審議会に財務省が提出した資料で「MMTに対する批判、コメント」を集めたもの。ところがここでコメントした経済学者等が2年も経たないうちにコメントを翻している。例えばグルーグマン氏は「債務が雪だるま式に増える可能性がある」と言っていたのが「政府の負債は雪だるま式に増えるのではなく、逆に溶けていく。政府は借りた金を返す必要なんてない」と変えている。他の方も同じように言っている。なぜこうなったのか。私の分析ではコロナ禍で本来上がるはずの金利が上がっていない。つまり金利はコントロールされているとわかったからだ。日本でも緊縮財政の代表格の経済学者伊藤元重教授も「過激な財政政策を多くの専門家が支持していることは注目すべきだ。長期構造的な不況を解消するためには次元の違う大胆な財政支出が必要となる。そう考える専門家が増えてきたのだ。コロナ危機はそうした財政政策転換の大きなきっかけを提供することになった」と述べている。この点について財務省はどのような考えるか。もう一つの質問は、資料②の「政府統合論」。これは衆議院の財務金融調査室が作った資料だが、統合政府に賛成の人が24名、反対の人が17名。この結果を財務省はどのように受け止めているか。
(伊藤副大臣)資料①については、右側(最近)のコメントは、新型コロナへの対応として積極的に財政出動すべきという議論であり、MMTを論評したものではないと理解した。例えばイエレン元FRB議長・現財務長官は公聴会の中で「持続可能で責任ある政策を立案するためにも金利上昇リスクを考慮する必要がある」と述べている。政府としては、財政運営に対する信認が失われることになれば、過度なインフレや金利上昇が起こる可能性は否定できないので、国民生活に悪影響を与えかねないと考え財政運営を行う必要があると考えている。資料②については、政府と日銀のバランスシートを連結して考えるということは、日銀は政府から独立して金融政策を決めているにも関わらず、政府は日銀が永久に国債を購入・保有し続けることを念頭に置いているのではないか、結果的に財政ファイナンスを狙っているのではないかとの誤解を招きかねず適当でないと考えている。仮に政府と日銀のバランスシートを統合し、日銀の保有する国債(資産)でその分政府の負債(国債)を相殺する場合、確かに日銀の保有する国債の額だけ政府の債務は見かけ上減少することになる。しかし銀行券や当座預金といった日銀の負債も併せて負債に計上されることになるため、トータルとしてネット上の負債超過の状況は変化しない。大事なことは統合という会計処理によって見かけ上の政府債務が減少されることではなく、財政健全化に取組み、財政を持続可能な形にしていくことが重要と考えている。
(高井)副大臣も財務省に洗脳されてしまっているようで大変残念だ。政治家しか変えられない。財務官僚からは絶対変わらないので、副大臣には頑張ってほしい。
【資料①】2019年4月17日の財政制度審議会の説明資料「MMTに対する批判、コメント」と最近のコメント
【資料②】統合政府論に関する資料リスト
国民一律10万円給付は財務省の政策に合致する(「MMT・反緊縮」財務省と8度目の質疑)
5月26日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と8度目の質疑。財務省は前回より官僚(宇波主計局次長)ではなく政治家(伊藤副大臣)が登場するようになりました。
以下は議事録の要約版です。詳しく(正確に)知りたい方は動画をご覧ください。
財務省は日本経済よりも財政健全化を優先しているのでは
(高井)伊藤副大臣は前回の答弁で「日本経済の低迷が長引いた原因として、デフレが顕在化する中で企業が投資を控え、将来不安などから消費が低迷したこと」と言われた。まさにその通りだ。それがわかっていながらなぜ消費税増税をしたのか。消費税増税により消費は低迷しデフレが続いている。そう考えると財務省は日本経済の回復よりも財政健全化を優先していると考えざるを得ないがどうか。
(伊藤副大臣)金融政策、財政政策、成長戦略この取組みを一体として進め、経済再生と財政健全化の両立に向けて取り組んでおり、その結果、2019年のGDPは名目、実質ともに過去最高水準となった。財政健全化やPB黒字化目標は、コロナ禍で更に財政状況が悪化する中で市場の信認を維持すること、また少子高齢化などの構造的な変化の中で社会保障などの持続可能性を確保するとともに、いざというときのリスクに備えて政府の対応余力を確保する観点から重要と考えている。消費税については、全世代型社会保障制度へ大きく転換するためにどうしても必要だったと考えている。引き続き民需主導の経済成長を実現し、社会保障の持続可能性を高める改革など、歳出歳入改革の取組みを継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいりたい。
(高井)経済再生と財政健全化は両立しない。どちらを優先するかで財務省は明らかに優先順位を間違えた。これだけデフレで消費が落ち込んでいる時に消費税増税をやってしまった。これは認めた方がいい。
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国民一律10万円給付は財務省がめざす政策に合致する
(高井)与党の中でも私の考えに同調しアドバイスをくださる方もいる。この質問は与党の某議員からの提案だが、財務省がめざす「債務残高対GDP比」の改善のためには、国債を12兆円発行し、国民一律10万円給付を行えば、分子の債務残高よりも分母のGDPが増えるためいいのではないか。
(伊藤副大臣)分子の債務残高はストックであり年々累積されていく。分母のGDPはフローであり一時的に増加することがあっても、その増分が将来にわたって持ち越されるものではない。よって翌年度以降の債務残高対GDP比の改善につながるものではない。また仮に現金給付を行ったとしても家計が給付金を消費して初めてGDPにカウントされるので全てがGDPに計上されるわけではない。政府としては2025年度PB黒字化目標の達成に向けて社会保障の持続可能性を高める改革など歳出歳入改革を継続することが重要と考えている。
(高井)「政府としては」というが、PB黒字化や財政健全化などは財務省以外の省庁は求めていない。MMTの米国第一人者を招いた勉強会には野党議員よりも与党議員の方が圧倒的に多く参加していた。財務省も真剣に考えてもらいたい。
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インフレ率を予測して国債発行額を決めるべき
(高井)国債を発行する際に金利やインフレ率がどの程度になるかは予測できる。れいわ新選組の山本太郎代表が参議院調査室に試算してもらって、毎月10万円を支給して年間144兆円の国債を発行してもインフレ率2%にならないと試算されている。これを内閣府などで試算し、一定水準に達するまで国債を発行するルールを決めておけば債務不履行やハイパーインフレは起こらないのではないか。
(伊藤副大臣)金利やインフレは様々な要因によって決まるため財政政策との関係のみで議論することは極めて困難。仮に財政運営に対する信認が失われることになれば過度な金利上昇やインフレが起こる可能性は否定できない。事前に予測することは非常に困難だ。金利やインフレが一定水準に達した場合に国債の発行を停止することによって、歳出の大きな部分を占める社会保障の急激な削減や増税などを行わざるを得ないため国民生活に大きな影響を与えかねない。総理も4月23日の当委員会で答弁されたと聞いてますが、金利やインフレを予測し、その数値が一定水準に達しなければ国債を発行するというルールを設けることは現時点では考えていない。
(高井)私は増税をしなくていいようにその手前で国債発行を止められるように予想できるはず。金利やインフレが財政出動のみで決まらないのは当たり前。これだけデフレが続いている中で財政出動してもインフレにならなければ他の要因でハイパーインフレなど起こるはずがない。
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インフレ率2%まで国債発行をルール化すべき(「MMT・反緊縮」財務省と9度目の質疑)
5月28日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と9度目の質疑。今回も官僚(宇波主計局次長)ではなく政治家(伊藤財務副大臣)が答弁。
いつも政府は「(詳しく答弁したいので)官僚に答弁させてもらえないか?」と頼んでくるのだが、この件に関して財務省は「副大臣から答弁させてください」と言ってくる。意図的に財務官僚からの答弁を拒んでいるようにも思えるが、副大臣からの答弁を拒む理由もない。
以下は議事録の要約版です。詳細を正確に知りたい方は動画をご覧ください。
財務省設置法第3条(任務)は改正すべき
(高井)5月21日の当委員会で「財務省の主な任務は何か」と質問したところ、伊藤副大臣は「適切な経済財政の運営」と答えた。同じ質問を宇波主計局次長にもしたのだが、宇波次長は「副大臣に答弁に尽きるが、例えば財務省の政策評価実施計画において財務省の使命として『広く国の信用を守り、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現する』と記載されている」と答弁された。いい答弁だと思うが、根拠が政策評価実施計画という点がおかしい。財務省設置法第3条(任務)の冒頭には「健全な財政の確保」と書かれており、もし本当にそう考えているのならば財務省設置法を変えるべきではないか。
(伊藤副大臣)宇波次長は「私が申し上げた適切な経済財政の運営ということに尽きる」とお断りした上で、先ほどの答弁があった。そういう意味では、財務省設置法に基づいて、文字通り予算と税制を主に駆使しながら適切に経済財政を運営していく、これが財務省の使命だと考えている。
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「インフレ率2%まで国債発行」を法律にすべき
(高井)一昨日私が「インフレ率2%になるまで国債を発行することを法律で決めたらどうか」と提案したところ、伊藤副大臣は「インフレ率2%まで国債を発行するというルールを設けることは『現時点では』考えていない」と答弁した。4月23日に同じ質問を菅総理にしたところ、総理からは『現時点では』という言葉はなかった。これは伊藤副大臣が独断で付け加えたのか、財務省の事務方と答弁をすり合わせての答弁なのか。
(伊藤副大臣)先日答弁した通り、インフレ率をコントロールしたり予測することは私の知り得る限りでは非常に難しいと思う。よって私が『現時点では』とあえて付け加えたのは、将来様々な研究者などが出てきて、もしかしたらそういったことを推測できる時代が来るかもしれない。そういう意味で、現時点ではそういうことは考えていませんと私は答弁した。
(高井)これはすごく重要な答弁だ。「現時点では」とわざわざ付け足したということは、将来的にはあり得るということを財務省も認めた。アメリカの経済学者も大きく見解を変更しつつあり、そういう考え方も視野に入れなければならないということを加味していると受け止めた。
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年間144兆円国債を発行してもインフレにならない(「MMT・反緊縮」財務省と10度目の質疑)
6月2日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と10度目の質疑。今回も宇波主計局次長ではなく伊藤財務副大臣が答弁。
以下は議事録の要約版です。詳しく(正確に)知りたい方は動画をご覧ください。
参議院調査情報室「144兆円国債発行してもインフレにならない」財務省も認める!?
(高井)財務省は「日本は世界で最も借金が多い国だ」と宣伝するが、自国通貨を発行できる政府の国債は、我々国民の借金とは違う。政府の負債は国民の資産になる。国債=借金という言い方は改めるべきだ。れいわ新選組の山本太郎代表が毎日演説で訴えているのが「毎月10万円を給付する。そのための財源は年間144兆円になるが、これだけの国債を発行してもインフレ率2%にならない。参議院調査室に試算してもらった」と。そこで山本さんに了解をもらって参議院調査室の試算データをもらい昨日財務省に渡しました。参議院調査室の試算では、4年間144兆円の国債を発行してもインフレ率は2%にならない。それどころか3年目、4年目にはインフレ率は下がっていく。この試算を財務省としてどのように考えるか。
(伊藤副大臣)国債残高とインフレとの関係は、マクロ的な需給の関係、家計や企業のインフレに対する予想など様々な要因によって決まるので、国債残高との関係のみで議論することは困難だ。ご指摘の参議院調査情報担当室の試算については、その試算の前提となる詳細が把握できないため、コメントは控えたい。いずれにしても、仮に財政運営に対する信認が失われることになれば、過度な金利上昇やインフレが起こる可能性があることは否定できないと考えており、こうした事態がいつ起こるかは事前に予測困難だ。よって財政運営に対する市場の信認が将来にわたって失われないように、社会保障の改革など経済再生と財政健全化の両立に取組むことが重要と考えている。
(高井)国債を発行し財政を運営する立場の財務省が、国債を発行して金利やインフレがどうなるか予想できないということ自体がおかしい。もちろん単純に国債発行額だけでインフレ率が決まるわけではないが、重要な要素であることは間違いない。政府にこういう試算を行う部署を創るべきで、財務省がやらないならば、内閣府や経済財政諮問会議などでやるべきだ。こういう話になると、財務省から予算権限を取り上げるべきとの議論になる。民主党政権発足時に国家戦略局で予算編成をやろうとしたが、9月の内閣発足から年末の予算編成まで時間がなく、財務省に任せてしまったが、それが民主党政権の最大の失敗だったと思っている。今の答弁で明らかになったのは、財務省は暗に参議院調査情報室の試算を認めたと思う。相当分厚い生データを全て財務省には渡してある。もしこれが間違っているならば間違っている部分を指摘するはず。私が見ても計量経済学のモデルとしては全く間違っていない。それを財務省も認めたと受けとめさせてもらう。
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国民一律10万円給付、事業規模に応じた給付金をやるべき
(高井)財務省と国債発行に関する見解が大きく異なりなかなか溝が埋まらないが、せめてコロナ禍だけでも国債をもっと発行すべきではないか。既に80兆円発行したと胸を張るが、全然足りない。これだか多くの国民が困窮しているのだから。山本太郎さんのように毎月とは言わないが、せめてもう一回10万円給付をすべきだ。12兆円でできるのだから。加えて事業者への補償。国民民主党が法案を出している「事業規模に応じた給付金」。これは実際にドイツで実施しており、1事業者に最大2億円まで支給する。我々の試算ではこれだけやっても6.5兆円でできる。このままでは倒産する事業者が続出する。感染者数だけでなく倒産件数や経済的理由による自殺者数なども発表すべきだ。財務省は追加の国債発行を決断すべきだ。
(伊藤副大臣)これまでも、緊急小口資金等の新規貸付、再貸付の継続、債務免除要件の明確化、生活困窮者自立支援金の支給、住居確保給付金の再支給の継続、低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金、求職者支援制度等職業訓練の抜本的な拡充、休業要請等に応じた飲食店や大規模施設等に対する協力金、またそれらに類する持続化給付金、一時支援金、月次支援金などを行っている。引き続き新型コロナの影響を受け厳しい状況のある方々や事業者をしっかり支援してまいりたい。
(高井)副大臣も官僚が書いた原稿を読まされて大変だと思うが、そんなものでは済まないレベルになっている。総合支援資金を延長しても1400億円。自立支援金だって500億円だ。さきほど言った144兆円などというレベルの話ではないのでぜひこれはやってほしい。
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経産省や米財務長官の「積極財政」発言に対する財務省の見解は(「MMT・反緊縮」財務省と11度目の質疑)
6月9日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と11度目の質疑。今回は財務省とは正反対の見解(積極財政)を表明した経済産業省から話を聞いた上で、これに対する財務省の見解を聞いた。
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国の財政と国民の命どちらが大事なのか
(高井)生活困窮者を救う総合支援資金の再延長にかかる予算は1400億円程度。なぜ財務省は認めないのか。国民の命よりも国の財政の方が大事なのか。
(伊藤副大臣)もちろん国民の生命財産を守る、これは最大に尊重させる価値があるので、私はその一環として財政にも目配りをしなければならないと考えている。引き続き生活に困窮される方々の支援をしっかり行い国民の命と暮らしを守ってまいりたい。
経産省が公表した積極財政への提案の具体的意味は
(高井)私はこの間ずっと国債をもっと発行すべきと主張してきた。驚いたのだが、6月4日に経済産業省が産業構造審議会に「経済産業政策の新機軸」と題する14枚の資料を出したが、その中には、
- 財政出動を大規模・長期・計画的に行う
- 低インフレ、低金利においては財政政策の役割も重要
- コロナ禍による総需要の急減は低成長を恒久化する恐れがある
- コロナ対策やマイルドなインフレを実現するための財政支出の拡大は財政収支を悪化させるが、超低金利下ではそのコストは小さい
- 税制についても、格差の是正などミッション志向で改革に取り組む
等の記載がある。これは私がずっと主張してきた内容で、かつてMMTに反対してきたアメリカの経済学者たちが最近見解を変えているが、これを経済産業省も主張していると受け取れるが、具体的な意味を教えてほしい。
(河西経済産業省審議官)
本資料は経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会に、昨今の不確実性の高まりや長期停滞など世界の変化を踏まえ、今後の経済産業政策の大きな方向性について議論してもらうため論点として提示したもの。ご指摘の点それぞれ説明すると、
- 昨今の欧米の産業政策を参考にしつつ、単なる量的な景気刺激策ではなく、成長を促す分野や気候変動対策など真に効果的な財政支出を前提として、大規模・長期・計画的な産業政策が必要としている
- コロナ禍においては総需要が不足しており、金利が極めて低い状況においては、経済成長を促進する上で、効果的な財政政策の役割も重要
- コロナ禍による雇用情勢の悪化や設備投資の鈍化などが定着し回復しなければ、潜在成長率の低下を招き、コロナ終息後も長く低成長になるリスクがある
- 長期停滞や大規模な金融緩和に伴う低金利が、現在の世代に国債発行のコストを感じさせない状況をつくり出している
- 歳入面(税制)の議論においては、格差拡大の防止といった政策目的の観点も考慮に入れることが必要
ただこの点は、産構審の当日も事務局から説明したのだが、必ずしも規律なき財政拡大が求められているという趣旨ではない。政府の方針として「経済再生と財政健全化の両立」は閣議決定されており、経済産業省も財政健全化は重要な政策課題と認識している。
経産省や米財務長官の積極財政提言に対する財務省の見解
(高井)まさに世界の経済学の潮流に追いついた提案をよくぞ言ってくれた。実は2016年に米国FRBイエレン議長が講演で同じことを言っていて「総需要を減少させるショックが総供給に恒久的な影響を与える負の履歴効果」。イエレン氏は現在の米財務長官だが6月6日には「米国の4兆ドル(440兆円)の財政支出はインフレと金利上昇を引き起こしても問題ない。10年間低過ぎるインフレ、金利と闘ってきた。これを通常の環境に戻したいだけ」と発言しているがこれはまさにわが国の当てはまること。この間財務省は私との質疑で正反対のことを言ってきたが、経済産業省の見解やイエレン財務長官の見解をどのように考えているのか。
(宇波次長)経済産業省の考えと政府方針との関係については先ほど答弁があったとおり。経済対策においてもグリーンやデジタル等の成長分野に予算を重点化し経済再生を進めることが極めて重要。一方で日本の財政赤字の拡大は社会保障と給付の負担のアンバランスという構造的な課題によって生じている。社会保障に対する国民不安や自然災害などに機動的に対応する財政余力を確保するためにも財政の持続可能性確保は必要。こうしたことを総合勘案して、経済再生と財政健全化の両立を図ることが政府の方針。イエレン氏の発言は他国の財務長官の発言の解釈は予断を持ってコメントすることは差し控えたいが、その上で申し上げれば、この発言は財政の持続可能性が重要であることや、金利やインフレの動向を考慮すること自体を否定する発言ではなかったと受け止めている。発言前日の6月5日にイエレン長官も合意しているG7声明では「コロナからの回復が確かなものとなれば、将来の危機に対応し、より長期的な構造的課題に対処できるよう、財政の長期的な持続可能性を確保する必要がある」と記載されている。
(高井)硬直的な財政健全化至上主義の財務省の体質を変えない限りこの問題は解決しないとつくづく思う。
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なぜ今「プライマリーバランス黒字化」なのか?(「MMT・反緊縮」財務省と12度目の質疑)
6月12日の厚生労働委員会において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と12度目の質疑。
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(高井)一昨日報道された「骨太の方針」を見て驚いた。今さら「プライマリーバランス(PB)の黒字化堅持」などこの状況でよく言うなと。世界各国見ても、アメリカ、イギリス、ドイツでも今は積極財政でコロナ禍を乗り切ると。その中でワクチンでも給付金でも日本が一番遅れている。世界と歩調を合わせて積極財政でやらなければならない時になんと「ピント外れでKY(空気が読めない)」なのかと思った。なぜ今PB黒字化などと言うのか。
(伊藤副大臣)新型コロナ対策は他の先進国に比べても十分な規模の対応を行っている。また新型コロナに必要な支出を行いつつ財政健全化をめざす考え方自体は各国の動向を見ても大きく異なるものではない。例えば米国では4兆ドルの経済対策に合わせて税制改革案を発表し対策の全財源を賄う方針を示している。英国では財務大臣が財政健全化の必要性を演説し法人税率の引き上げを発表した。EUはコロナ禍のために発行する債券の償還財源として新たな賦課金の検討を行っている。日本の財政は少子高齢化の進行を背景に、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的な課題を抱えている。引き続き、目下の対策を行いながら、2025年度PB黒字化の目標達成に向けて、社会保障の持続可能性を高める改革など、歳出歳入両面の取組を継続していきたい。
(高井)つまみ食いのような財務省にとって都合のいい各国の政策だけ挙げられた気がする。全体的な流れを見れば、経済学者や米財務長官ですら積極財政に向かう発言をしている中で、今「PB黒字化」なんて見出しが出たら国民は失望すると思う。百歩譲って、生活困窮者に対する貸付「総合支援資金」は予算額はわずか1400億円。しかも貸付だから返ってくる。財務副大臣が「田村厚労大臣に任せます」と言ってほしい。
(伊藤副大臣)困窮者自立支援金も含めて重層的なセーフティーネットにより生活に困窮される方々の支援をしっかり行ってまいりたい。
【動画】https://takaitakashi.com/archives/41572
144兆円国債を発行し国民一律10万円給付すべき(「MMT・反緊縮」財務省と13度目の質疑)
8月4日の厚生労働委員会(閉会中審査)において「MMT・反緊縮」をテーマに財務省と13度目の質疑。今回は初めて中西財務副大臣が答弁に。
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(高井)新型コロナで亡くなる方と同じように国民生活も重症だ。30兆円の予算を繰越しており、この中にはGoToのような使わなくてもいい予算も含まれているので、思い切って組み替えて国民一律10万円と低所得者20万円の給付をやるべき。時短協力金や月次支援金等も金額が小さいから不満がたまり時短要請に応じない飲食店が出てくる。ここは国債を100兆円くらい発行して徹底的に補償すべきだ。この委員会で伊藤副大臣に「れいわ新選組の山本太郎代表が参議院調査室に依頼して144兆円国債を発行してもインフレ率2%にならない」という試算を出しているが、この試算に対して財務省は「異論はない」旨答弁している。米国は「低成長、低金利、低インフレ」の日本化を恐れて、日本のようにならないために財政拡大をやっている。その日本が財政健全化をやるなんておかしい。もし財政健全化が必要だと言うのならば、必要な明確な理由を答えてほしい。
(中西副大臣)100兆円という金額は大変大きな金額だと思う。30兆円の使い残しとおっしゃるが、これは明許繰越しといって使い道が予定されているものを今年度使うということで繰り越させているもの。財政健全化については、将来世代のことを考えると、財政に対する市場の信認を維持していくこと、社会保障等の持続可能性を確保することが必要であり、財政健全化とコロナ対策をしっかり両立させていくことが大切であると考えている。