【ヨーロッパ視察(その6)】シュタットベルケ(都市公社)を視察
【ヨーロッパ視察(その6)】
オスナブリュック市のシュタットベルケ(都市公社)を視察しました。
まず驚いたのは規模の大きさです。3階建ての自社ビルに社員900名が働いており、事業は電気、ガス、上下水道、熱供給、公共交通、公共施設管理、ゴミ収集など多岐にわたります。
1858年に設立され、かつては公営企業でしたが、1964年に民間株式会社に移行します。市が100%出資していますが、市は配当を得るのみで経営にはタッチしませんし、市職員の天下りや出向なども一切ありません。
社長はコンサル会社出身で、別の小規模のシュタットベルケでの経験を買われてヘッドハンティングされてきたそうです。監査役会は、市長が議長を務め、市議会議員8名と市職員(労働組合)5名で構成されており、社長を選任する他(任期5年)、経営方針を決定します。したがって、経営方針には市の意向が反映されますが、経営の執行は民間企業経験者に任せるという極めて効率的な仕組みです。
「日本では、100%出資の子会社ならば、必ず親会社(市役所)から人を送り込みたくなるのだが、なぜドイツではそうならないのか?」
と質問したところ、
「市の職員は優秀だが、経営は得意ではない。経営はその道のプロに任せた方がよい。」
との極めて明快な答えが返ってきました。
このシュタットベルケの素晴らしいところは、いくつもの公共事業を1社で担うことによって、内部相互補助ができる点です。公共交通や公共施設の運営などはどうしても赤字にならざるを得ませんが、エネルギー分野などは黒字が見込まれるため、黒字事業から赤字事業への補填が可能です。
エネルギー事業では、風車を11基所有し、市内2万世帯分の電気を供給しているほか、他地域の風車56基に対して出資も行っています。また家庭の太陽光発電のリース事業を行っており、各家庭で採算がとれるように低めのリース料を設定しています。
また公共交通事業では、バス156台を運行しており、毎年1路線ずつ電気バスを導入する計画であり、さらに将来的にはオンデマンドの自動運転バスを走らせる計画や、バスの運行に併せて信号をコントロールし、ノンストップでバスを走らせる構想もあります。
カーシェアリングにも力を入れており、駐車場を指定するスタンド型が50台、乗り捨て型が25台あります。ドイツではカーシェアリングが普及しており、600都市で150万人が利用しており、首都ベルリンでは、自動車・バイク・自転車のカーシェアを40社1万台提供されているそうです。
それにしても、16.8万人の都市で、900名の職員を擁する都市公社(シュタットベルケ)がこのような事業を行っていることに大きな衝撃を覚えました。
ドイツのシュタットベルケは歴史も長く、一朝一夕に日本で真似できるわけではありませんが、少なくとも
① 内部相互補助(黒字事業の利益で、赤字事業を維持)の仕組み
② 公益事業に民間企業の経営ノウハウを導入する仕組み
の2点は日本も見習うべきです。
帰国後さっそく総務委員会で質問に立つ予定なので、地方自治を所管する野田聖子総務大臣に「日本版シュタットベルケ」を提案しようと思います。