【マレーシア視察報告(その1)リュウ・チン・トン国防副大臣(※)】
【マレーシア視察報告(その1)リュウ・チン・トン国防副大臣(※)】
※昨年9月に消費税を廃止したマレーシアへ超党派議員団で視察(マレーシア大使館によれば国会議員の視察団は初めてとのこと)
※与党第2党「民主行動党(DAP)」の幹部で、2018年5月の政権交代前の「野党連合マニフェスト作成委員会」メンバーの一人
マレーシアでは、1972年にSST(売上・サービス税)を導入。しかし、課税対象品目が限られており、税収も少ないことから、1980年代からGST(消費税)の導入が検討されてきた。
消費税は消費にネガティブな影響を与え、貧困層が苦しむことから、本来は所得税が望ましい。一方で、1990年以降、近隣諸国で所得税引き下げ競争が行われてきた。シンガポールや香港は引き下げ過ぎて、今の所得税を維持できなくなっている。香港の抗議運動は中国に対する反発だけではない。小さな政府、低福祉に対する怒りが元凶である。
2013年、前政権のナジブ首相によってGSTの導入が表明され、2015年4月SSTが廃止され、GSTが導入された。
国民の13%しか所得税を払っていない実態があり、近年、外国人労働者が急増し、平均賃金が低下している現状を打開するため、全国民が対象となるGSTが導入された。
しかし、GST導入は国民の批判を受け、更に、政権のスキャンダル(ワンMTV問題)が起り、度重なる汚職や腐敗の結果、2018年5月9日の総選挙でマハティール前首相を担ぐ野党連合が勝利し、1957年の独立以来、初めての政権交代が実現する。
野党連合は、政権公約の柱に「GST廃止」を掲げた。2018年6月にGSTを廃止し、3ヶ月間はタックスフリー期間とし、9月からSSTを復活させた。
今回のGST廃止は今後の税制改革のスタートに過ぎない。国民にはGST廃止を誇るよりも、過度な石油依存、科学技術への投資等の大きな構造改革を示す必要がある。
新政府の大きな課題は「汚職の撲滅」と「新税収の確保」。富裕層に対する税金を増やす所得税改革が必要。科学技術等への投資により生産性を高め、経済成長を進め、所得税・法人税の増収につなげたい。
消費税の増加は国の自滅を招く。より広範な政策を実施し、経済成長は実現できる。経済成長はよりよい雇用、賃金によってのみ実現できる。
マレーシアの法人税は24%で高くはない。中小企業への減税をもっと進めたい。香港やシンガポールと減税で競争するつもりはない。
これからは消費税ではなく経済成長で高い税収を確保したい。
過去の経緯を踏まえると、今の連立政権など考えることもできなかった。20年前はマハティール首相とワン副首相は敵同士だった。しかしナジブ政権があまりにひどいため、我々は手を組んだ。そして奇跡を起こした。
マレーシアには、合法の外国人労働者が200万、更に違法労働者が200万人いる。そして少なくとも40万人がシンガポールで低賃金労働に従事している。IoT政策を進め、単純労働を減らすことにより、この40万人をマレーシアに戻したい。