「MMT」に対する財務省のあきれた見解
国民民主党「政調第1・第2合同部会」にて財務省の角田主計局次長から来年度予算案についてヒアリングを行いました。
活発な質疑が続いたため、部会長である私からは質問を控え、終了後に電話で角田次長と「MMT(現代貨幣理論)」について以下の通り議論を交わしました。
【高井】財務省はMMTについてどのように考えているのか?日本の国債のデフォルト(債務不履行)はあり得ないと財務省も認めているはず。
【角田次長】財務省はMMTをまともな理論だとは思っていない。経済学者の間で論争がある政策を我々は採用できない。「実験的にやってみて失敗した」では済まない。国債を発行し続ければいつか必ずハイパーインフレを引き起こし財政は破綻する。積み木を積み重ねていけばいつか必ず倒れるのと同じだ。今は大丈夫でも将来大丈夫とはならない。
【高井】MMTは永遠に国債を発行するわけではない。積み木は何個までと決めて積めば倒れないのと同じで、「インフレ率2%まで」と決めて国債を発行すれば問題ない。
【角田次長】インフレは予見できないので2%で止まる保証はない。2%に近づいた時に急に国債発行と財政支出を止められるのか?政治家がそういう決断をできるのか?
【高井】できるかどうかは政治家の資質による。財務省がそこを心配するのはわからないではないが、MMTは理論として正しいことは認めるべきだ。正直に「政治家は信用できないから採用しない」と言えばいい。MMTを実行するには財務省(財政)と日銀(通貨発行)を一体とする「統合政府」が必要と考えるがどうか?
【角田次長】「統合政府」は「政府紙幣」発行と同じ発想だが、政府紙幣はかつて失敗した反省がある。「通貨発行は中央銀行(日銀)が政府から独立して行うべき」というのは歴史の教訓だ。
【高井】世界各国では「統合政府」の議論が進んでおり、必ずしも歴史の教訓とは言えない。財務省は所掌上「財政健全化」が仕事だ。しかし「官庁の中の官庁」と言われる財務省には日本国全体のことを考えてほしい。今最優先でやるべきことは6兆円落ち込んだ税収を増やすこと、すなわち「経済再生」だ。
【角田次長】我々も財政健全化だけを考えているわけではない。今は経済再生が優先と考え、巨額の国債を発行している。
【高井】財政出動(国債発行)はまだまだ足りないが、経済再生をやる気があることはわかった。コロナ禍が終息し、経済が再生するまでは、反緊縮財政でお願いしたい。
主計局次長といえば財務省のエースで将来の事務次官候補が就くポジションだ。その方がMMTに対してこの程度の認識であることに驚いた。
せめて「MMTは理論としては理解するが、財務省としてはその立場は取れない」という返答であればまだわかるが、世界中の新進気鋭の経済学者が真剣に議論しているMMTを「まともな理論だと思っていない」と門前払いするのはあまりにも不誠実で職務怠慢だ。まずは徹底的に研究した上で、反論も論理的に行ってほしい。
財務省がこういう人ばかりではないことを信じたいが、財務省はもう少し真剣にMMTを勉強すべきである。