【ヨーロッパ視察(その9)】 eガバナンス・アカデミーを訪問し、Hannes氏とお話をしました

【ヨーロッパ視察(その9)】

eガバナンス・アカデミーを訪問し、電子政府構想の中核を担ってきたHannes氏(元国会議員・エストニア第二の都市タルトゥ市の副市長)から話を聞きました。

エストニア政府は、1991年の独立後、主たる産業も資源もない中で、ITを活用して生産性を高めるために積極的投資を進め、通信インフラとインターネット環境の整備に努めるとともに、行政文書の電子化を進めてきました。

2002年には15歳以上の全ての国民にICチップを埋め込んだIDカードの保有を義務付け、134万国民のうち約120万人が保有しています。

IDカードには、氏名、生年月日と11桁の国民ID番号が記され、ICチップにはデジタル署名のための電子証明書が記憶されており、ネット上で簡単に本人確認ができます。このため、運転免許証、健康保険証、交通機関の定期券などに活用され、ネットバンキングや銀行口座の残高照会などにも使われています。

行政サービスの99%がデジタル化されており、その基盤となるのが「X-Road」と呼ばれるデータ連携のプラットフォームで、約52,000機関が接続されています。

私から、

「日本でも遅ればせながらマイナンバーを進めているが、必ず個人情報漏洩の心配の声が上がる。エストニアではそういう声はなかったのか?」

と質問したところ、Hannes氏からの答えは、

「エストニアでも心配の声はあったが、デジタルの方がアナログよりセキュリティは高い。紙だとのぞき見やコピーされてもわからないが、デジタルならばアクセス履歴が残る。これを本人が確認できる仕組みを作った。そもそも政府は既に国民の個人情報を持っている。そのことを国民に理解してもらうために時間をかけて説得した。紙も残すし、強制ではない。やっているうちに国民が利便性を実感し、徐々に普及していった。利便性を実感した若者たちが、高齢者を教育していった面もあった。」

というものでした。

国会議員や政府幹部は若い世代が多く、こうした分野に抵抗が少なかったことも推進できた一因だったようです