財務省の公文書改ざん問題
財務省の公文書改ざん問題で国会は大混乱です。
この問題がいかに大きな問題であるかは、私が言うまでもなく、新聞各紙社説の見出しを見れば明らかです。「民主主義の根幹が崩れる」(朝日新聞)、「立法府欺く前代未聞の罪」(毎日新聞)はもとより、普段は政権寄りの読売新聞も「行政への信頼を失墜させた」、産経新聞も「国民への重大な裏切りだ」とまで書いています。
私も13年間官庁で働いてきましたが、各部局には公文書をチェックする担当がいて、決裁する前に必ず一言一句チェックされます。もし決裁後に訂正するなどということがあれば、1文字訂正するだけでも大変です。
また決裁文書は必ず担当部局のみならず、官房文書課がチェックします。特に財務省は、多くの省庁が課の名称を官房総務課に変更した後も、頑なに「文書課」を名乗り続けており、官庁の中でも最も公文書にこだわってきた役所です。更に、官房文書課長は全課長の中で一番上の課長であり、直属の上司は官房長、事務次官、大臣です。大臣と一番話をする機会の多い課長が官房文書課長ですから、今回の責任を佐川理財局長のみに押し付けることはかなり無理があります。
なぜ「官庁の中の官庁」と言われる財務省が、組織ぐるみでこのような「前代未聞の罪」を犯してしまったのか。私はこの原因の解明こそが何より一番重要だと考えます。
本件は、財務省だけの問題ではなく、霞が関全体の問題です。それは近年似たような事案が頻発しているからです。防衛省の南スーダン日報問題、内閣府・文部科学省の加計学園問題、厚生労働省の裁量労働制データねつ造問題等々、一昔前の霞が関ではあり得なかった、公文書の隠蔽や改ざんが各省庁で頻発しています。その原因は「忖度」です。いずれの事案も、安倍1強と言われる中で、官邸の意向に逆らえない官僚が、禁断の手を使ってしまったのです。
なぜ「忖度」が起こるのか。キーワードは「人事」です。官僚にとって人事は何より大事です。官僚同士はいつも「〇年入省の〇〇です」と自己紹介します。〇年入省で誰が事務次官になるか、飲み会ではいつもその話題で持ちきりです。国家公務員試験の成績が優秀で、入省時から事務次官候補と言われ、そのまま事務次官になった人もたくさんいます。そのくらい官僚にとって人事は重いものです。その人事を官邸(菅官房長官)は巧みに操ってきました。私が国会(内閣委員会)で問題にした内閣法制局長官や宮内庁長官人事は露骨な人事介入ですが、それ以外にも、報道されていない人事介入はたくさんあります。現役官僚から話を聞くと、どの省庁にも官邸(菅官房長官)の鶴の一声で差し替えられた人事が必ずあります。官僚たちはいかに官邸(菅官房長官)の怒りに触れないかを常に意識しています。
この話をすると、民主党政権時に導入を決定した「内閣人事局」が悪いと言われます。しかし、私は内閣人事局そのものは間違っていないと思います。問題はその運用です。内閣人事局制度を悪用して、人事権を濫用した結果が今の状態です。官僚主導から政治主導への道は決して間違っていないと思いますが、政が官に過剰に介入し、官が公文書を改ざんしてまで政におもねる今の姿は明らかに行き過ぎです。この辺で、もう一度、政と官の役割分担を見直す改革が必要です。
この改革は、与野党を挙げて、国権の最高機関たる国会がやるべき仕事です。そのために、財務省や安倍官邸は洗いざらい事実を明らかにし、改革に協力すべきです。
我々野党もこの問題を安倍内閣の倒閣目的だけに利用してはなりません。この機会に、膿を出し切る「政と官の改革」をやらなければなりません。