「入管法改正」衆議院本会議討論(お蔵入り)

私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、「法務委員長義家弘介君解任決議案」に対し、賛成の立場から討論を行います。

討論に先立ち、今年3月名古屋入管局の収容施設内でお亡くなりになったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんのご冥福をお祈りし、心からお悔やみを申し上げます。

この事案につきましては、4月に中間報告が公表されたものの、事実と異なる内容が次々と明らかになっています。「仮放免すればよくなることが期待される」旨の医師の診断は記載されず、カルテには「点滴や入院」についての記述があったにもかかわらず「医師からの点滴や入院の指示もなかった」と正反対の内容が記載されているなど、改ざん・隠蔽を疑われても仕方がない内容となっています。

5月13日の法務委員会理事懇談会において、こうした矛盾点について入管庁に確認したところ、納得のいく回答は得られず、義家委員長や与党理事からも入管庁に対して厳しい指摘が相次ぎました。

義家委員長には野党の提案にも耳を傾けて頂き、時には法務省に対して厳しい態度で臨むなど、中立・公平・公正な委員長としての職責を果たそうと努力されていることに対しては敬意と感謝を申し上げます。しかし、入管法改正案の中身についての議論が十分尽くされたとはとても言えません。とりわけ改正案により権限が拡大する入管庁に対する信頼が損なわれている今、質疑を終局し採決を行うことは断じて容認するわけには参りません。

ウィシュマさんの他にも収容施設で亡くなった方はここ15年間で17名にものぼります。6畳1間に国籍も宗教も違う5人が共同生活を強いられ、自由時間以外の17時間半は就寝時にはお互いの体がくっつくほど密な状態で過ごす。病気になってもなかなか医師に診てもらえない。しかもいつ出ることができるかわからず、希望の見えない状況の中で、4年も5年も過ごすことがどれほど過酷であるかは想像に難くありません。2018年には1年間で自殺を図る被収容者は43名にものぼっています。

2018年3月末まで18年間入管職員を務めた木下洋一氏は、次のように述べています。

「広範な裁量権をもつ入管は、その裁量権をコントロールする手段を持ち合わせていない。裁判所や第三者機関が一切関与しないため、入管の判断や処分は、外国人の人権に密接に関係しているにも関わらず、チェック機能も存在しない。このような中で行政がブラックボックス化し、暴走するのは必然である。入管職員の多くは、今の入管体制に疑問を抱き、悩みや苦しみを抱えている。入管行政は『運用』ではなく『法』で規律すべきであり、そのために国会議員が動くべきだ」

また、様々な難民申請者を取材してきた樫田秀樹氏は、次のように述べています。

「取材を通じて痛感するのは、入管制度の問題は無関心という以前に知られていないという事実だ。国会の野党議員、市民団体や国際組織ですら、この問題への関心は薄いか、もしくは知らない。懇意にしている雑誌の編集者も『不法滞在なんだろ。自業自得だよ』と全く関心を示さず、そこから先に話は進まない」

今回の法務委員会における入管法改正案審議において、少なからずのマスコミが注目し、多くの国民が関心を示しつつあります。今この機運を逃すことなく、よりよい入管行政の在り方を、与野党の枠を超えて国会議員が今一度立ち止まって、真剣に議論することを切にお願いして、私の討論といたします。