加計学園問題について
加計学園の問題。地元岡山の大学の問題であり、かつて国会で「四国に獣医学部を新設すべき」と質問したことで、衆議院本会議や官房長官記者会見で名前まで出された私は、この件について発言を控えてきました。
ただこの間の議論を聞いていて、あまりにも的外れな指摘が多く、事実に基づかない発言をする方が多いので、この件に関わってきた者として一言申し上げておきたいと思います。
国家戦略特区諮問会議で獣医学部の新設が決まったのは2016年11月9日です。ところが、そのわずか2ヵ月弱前の9月16日に開催された国家戦略特区ワーキンググループでは、文部科学省も農林水産省も獣医学部の新設に否定的な意見を述べています。
その後2ヵ月も経たないうちに急転直下、獣医学部の新設が決まりました。この間に、どのような議論が行われ、どのような手続きを経て決まったのか?そこが全く説明されていないのです。
安倍総理を支持する方々は、「岩盤規制を打破して何が悪い」と言います。私も岩盤規制は打ち破るべきだし、四国に獣医学部は必要だと思います。しかし、岩盤規制の打破=規制緩和を行うにあたっては、規制官庁に対して最低限の説明(理屈)は必要です。しかし、どの資料を見ても、どの議事録を読んでも、その説明(理屈)はありません。
公表されている文書に残ってなくても、各省庁の担当者間で水面下の交渉が行われるケースはよくあります。しかし、私は、内閣府、文部科学省、農林水産省の担当者から何度も説明を聞いていますが、この2ヵ月弱の間、3省庁の担当者は中身のある交渉を全く行っていません。
「岩盤規制を打破する」立場の内閣府には、規制を続けようとする文部科学省や農林水産省を説得する責任があるはずです。説得を試みて、それでも規制官庁が納得しない場合には、総理や大臣の判断を仰ぐことは大いに賛成です(それが政治主導です)。でもその説得を試みた形跡が全くないのです。何の理屈や根拠もなく、ただ「官邸の意向」と言われても、それは納得できません。これでは「結論ありき」と言われても仕方がなく、前川前事務次官が反発するのも無理はないのです。
つまりこの問題の本質は、内閣府が本来やるべきことをやらず、「官邸の意向」という説明にならない説明で決めたことに問題あります。安倍政権の問題点は、総理が実際に指示を出したか否かではなく、総理の意向を忖度する体制を作ってしまったことにあります。これは森友問題にも共通して言えることです。官邸が人事権を濫用し、意にそわない官僚を更迭し、意にそう官僚を出世させてきたことにより、官邸に盲従する官僚の「忖度体制」をつくってしまったこと、そしてその結果「行政がゆがめられた」ことに問題があるのです。
我々野党もこの点を追及せず、「総理が指示したのだろう」の一点張りでは、いつまでたってもこの問題は解決しないと思います。