【欧州出張報告その20(スペイン放送協会「RTVE」)】

【欧州出張報告その20(スペイン放送協会「RTVE」)】

マドリッド郊外にあるスペイン放送協会「RTVE」を訪問し、ジョレンテ経営戦略局長、ペレス国際営業局長、ゴンザレス制作局次長等幹部の皆さんと意見交換しました。

スペインでは、かつては国営放送のみでしたが、1990年から民間放送が参入(現在8局)します。それまでRTVEの収入は、国庫補助金と広告収入で賄っていましたが、民放の参入により広告収入が減り、赤字が拡大したことから、2006年に「国有ラジオ・テレビ法」が成立し、RETVは100%政府出資の株式会社となります。

2010年には民放からの要請により、広告収入が廃止されます。これまでの広告収入約6億ユーロを補うため、通信事業者と放送事業者からの「負担金」が創設され、通信事業者と放送事業者は売上高の0.9~3%をRTVEに支払うこととなります。この制度については、通信事業者から違憲裁判が起こされますが、7年間に及ぶ裁判の結果、2017年に最高裁で合憲判決が出ました。

現在のRETVの収入は9.8億ユーロ(1150億円)。内訳は政府交付金3.5億ユーロ(415億円)、電波利用料3.8億ユーロ(450億円)、通信・放送事業者負担金2億ユーロ(235億円)となっており、一世帯当たり年50ユーロ(5900円)の負担となっています(NHK受信料は年1.5万円)。

受信料制度の導入も検討されましたが、①国民の理解を得られないこと、②EU各国でも受信料制度は廃止の方向に向かっていること等から、導入は見送られました。

RTVEの社員数は6000人(NHKは1万人)で、会長及び理事は国会が決めます。RTVEは、民放とは別の法律「国有ラジオ・テレビ法」で規制され、番組内容(報道番組の内制化等)、予算、人事、運営管理等が定められています。

「政府からの独立性確保」は歴代政権で議論となり、2006年に法令に規定されます。それまで会長は政府(首相)が指名し、解任もできましたが、2006年から会長の任期を6年とし、解任できないようにします(政権の任期4年と変えた)。

かつて会長の任命は国会の3分の2以上の賛成が必要でしたが、法改正で過半数で決めれるようになり、その後、2017年の法改正では「必ず複数政党の賛成があること」「必ず複数の立候補者がいること」が加えられました。

制度上、会長には誰でも立候補できますが、これまでのところ、RETV出身者以外の会長が選出された例はないとのことです。

理事は9名で任期6年。再任はなく、3年ごとに半数が改選され、男女比同じでなければなりません。理事は経営全般、予算の承認(国会へ提出)、役員人事などを担います。

なお、8名の役員中5名が女性で、管理職200名のうち約3割が女性とのこと。